「X」
さて、毎年恒例の「オタマジャクシ大量虐殺デイ」から三日経ちましたが皆さん元気にお
過ごしでしょうか。
今年は暖冬だったので首都圏では雪は降らなかったため、ホワイトクリスマスとはいきませ
んでしたけど、月並みな定型句に例えれば、例の白いヤツを生産して「ホラ、ホワイトク
リスマスだよ♪」「キャ、ホントね!ヒロシ、ス・テ・キ☆」とかやってたカップル、速やかに自
害して。ハッキリ言おう、死んで。ハッ、何がホワイトだ。そんなもんクリスマスじゃなくても
いつだって白いって話ですよ。白いっていうか白濁ですよ。たまに黄色いこともあるって話
ですよ。
大体、君たちが部屋やらホテルやらで不可解な縦揺れに勤しんでいる時、僕は完膚無
きまでにバイトだったって言うから驚きだ。僕が懸命に働きながら「ご新規さん、生で!」と
かやってる時にお前らと来たら「ヒロシ…ナマで…!」ってそんな感じだったんでしょうが。ガ
マン汁絞り出すぞこの野朗!
極めつけに、バイト終わってホームで電車待ちながらテトリスしてたら、横のカップルが「メ
リークリスマス」とか言ってるわけ。エッ、とか思って携帯の時計見たら0:00ピッタリなの。隣
のカップルがハッピーメリークリスマス!な時に僕は狂ったようにテトリス。駅のホームでテト
リス。で、カップルはそのままホテルに行って、狂ったように下半身のテトリスですか。「ヒロ
シのテトリス棒…!」そんな感じですか。死ね、黒チンコどもが。
と、書きましたが別にそんなにネガティブではなかったです。正直クリスマスにはそんなに興
味がないのですよ。いやね、そりゃあ小さい頃は好きでしたよ。サンタが何でもプレゼント
持ってきてくれたしね。ウィットに富んだ我が家のサンタは、僕が「ゲームギア下さい!」っ
てお願いしたらサンタの人形を持ってきたけどね。僕男の子なのにね。ダッチワイフかなー
と思ったらどうも違うみたいだしね。
で、そんなに好きだったクリスマスなんですけど、一昨年を境にあまり好きではなくなりまし
た。
−2002年12月24日
その日もとても寒かった。24日といえばクリスマス・イヴ。カップルの祭典である。
当時彼女のいなかった僕は、当然の様に暇を持て余してた。友達に連絡しても気のな
い返事。
「今日ヒマ?」
「いや、今日は六本木でちょっと…」
何だよ。六本木でちょっと何なんだよ。六本木でちょっと?
六本木でちょっと…
→六本木で狂ったようにSEX!
って、どうせそんな感じだろうが。死ね。死に絶えろ。
とはいえこんなイベントデー。当日に友達を誘っても無理なのはしょうがない。僕だってダメ
元だった。
とりあえず負けるのは嫌だったので
「ああ、俺も赤坂に行くよ」
って返信した。間違いなく行くだけだけど。行って帰るだけだけど。
街は一人身に冷たい。イルミネーションなんて目の毒になるだけ。
道行く人に「ケーキいかがですか♪」と声を掛けるお姉さんも、僕だけスルー。
うわっ…見ちゃったよ…みたいな目でスルー。
あれですか、僕はケーキを食うな、と。独り身には食う資格なぞない、と。うん、犯そう。
とまあそんな感じで途方も無く苛立たしい街並みだったわけで、こうして人は犯罪に手を
染めるのかと酷く感慨深いものがありました。
クリスマスなんてクソだぜ、死ね死ね皆死ねばいい、クソッ…とか思いながら歩いている
と、突然一通のメールが。
差出人 オカン
本文 今日はクリスマスだね。お金振り込んでおいたからケーキでも買いなさい。
何て言うか、泣いた。止めどなく泣いた。離れているから余計に家族の温かさを感じた。
ああ、そうだ、クリスマスって独りでも祝えるんだって。
いや、独りじゃない、離れていても家族はいるんだって。
我が家には仏壇と神棚があってキリストなんてビタイチ拝んだことないけど、この際それは
忘れよう、って…。
その足で僕は不二家に行った。オカンからのお金を握り締めて、狂おしいほどケーキを買
った。店員さんの「うわぁ、この人…!」みたいな目も全く気にならなかった。でも次に会っ
たら犯す。
止まっていた僕の心が ゆっくりと 動き出したんだ…
買ったケーキを狂おしい程抱きかかえながら僕は帰路に着いた。ハッピーメリークリスマ
ス!皆幸せに!
と、帰り道の途中にある書店に目が止まる。ああ、そういえば今週発売のチャンピオンま
だ読んでないな。読んで帰ろう、と思って書店に入った。
生憎その書店にはチャンピオンはなくて、チッ、使えねえな、まあいい、今日はクリスマスだ
から許してやるよ、でも次会った時には犯す!と思って店を後にした。
いやな、自転車のかごに入れてたケーキがモロリとなくなってるんですよ。
これにはさすがのはだかさんも怒り狂った。狂おしい程に怒り狂った。だってケーキですよ。
生ものですよ。それを盗むなんて、普通ありえないじゃないですか。
しかもただのケーキじゃない、オカンが僕を気遣って送金してくれた金で買ったケーキなん
だ。それをアンタ…!
もちろんオカンからの送金はまだまだ残ってた。でも、怒り心頭なのはもちろんのこと、ショ
ックが大きくてまたケーキを買いに行くことはできなかった。しかもまた買いに行こうものなら
不二家の姉ちゃんが「うわっ!この人また来たよ!」とか思うのは間違いない。うん、絶
対犯してやる。
ショックに打ちひしがれた僕は、それでもオカンの気持ちを無駄にしてはならない、とばかり
に帰り道のコンビニで130円のロールケーキを買った。甘いはずのそのケーキ、僕の舌で
はただただ涙の味を感じるばかりだったのだ。
あれ以来僕はクリスマスを祝えずにいる。
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